歯科領域におけるPBRNはDental Practice-Based Research Network (Dental PBRN)と呼ばれ、米国ではAHRQとは別にNIH(米国国立衛生研究所)が2005年に75億円の研究資金を投入して、7年間かけて3つのDental PBRNの構築をすすめました。2012年にはその中の1つのネットワーク(アラバマ大学DPBRN:登録歯科医師数1100人)に約70億円(2019年まで)の資金を投入して全米規模、最大5000人の歯科医師の参加を目指して、National Dental PBRNの構築が始まりました。PBRNの規模としては、予算規模、参加する臨床家の数ともに世界最大です。

現在、National Dental PBRNにより、歯科開業医の診療上の疑問を解決するためにDental PBRNを通じて大規模な多施設共同研究が行われています。National Dental PBRNは、2005年の発足時(前身のアラバマ大学DPBRN)から通算で80編以上の学術論文が発信されています。興味深い研究テーマとしては、以下のようなものがあります。

① 初期う蝕の診断における診療のばらつきに関する研究
② 修復物の寿命に関する3年間の前向きコホート研究
③ 根管治療後の痛みに関する頻度や期間に関する記述疫学的研究
④ 歯科衛生士によるインターネットを利用した禁煙指導(ランダム化比較試験)、など 

一方、我が国では2010年にDental PBRN Japan (JDPBRN)が構築され、米国National Dental PBRNと国際共同研究を行っています。