皆様はじめまして。Dental PBRN Japan会長の角舘直樹と申します。
Dental PBRN Japanは、我が国の歯科医学研究の歴史に新たな1ページを刻むことを目的に構築された研究ネットワークです。

 私は歯科医師として診療を始めた頃、自身の診療上の疑問に答えるエビデンス(科学的根拠)が少ないと感じることがよくありました。例えば、根管貼薬でどの薬を選択するべきなのか、咬合様式はどうしたらよいのか、顎関節症に関する治療は何から行えばいいのかなど、正しい答えがわからない場面に多々遭遇しました。なかでも特に、「歯周病患者のモチベーションを高めて行動変容を促すにはどのようにしたらよいのだろうか」ということが気になったのですが、その疑問を解決する糸口となるような先行研究は見当たりませんでした。 

そのような経験から「診療上の疑問に答えるためには、歯科医師自身が研究を実践することが望ましい」という結論に至り、開業医の現場にて臨床研究を実施しました。実際に始めてみると、倫理委員会の手続きをはじめ、日本では臨床現場で研究を行いやすい環境ではないということを感じました。そのような折に、「Dental Practice Based Research Network」が欧米で構築されていることを知りました。日本でもこのような研究ネットワークを構築したいと切望していたところ、2010年度に武田科学振興財団からの助成を受けることができ、念願であったDental PBRN Japanの活動を開始いたしました。